本気の英語学習(4) 進化の起こる場所

「歴史探訪の旅、日本史ミステリーと英語の秘密」という題で、これまで3回に渡って、歴史を通して真の英語学習というものを考察して参りました。今回がこのシリーズの最後となります。

【マルキオン 笑開眼】
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
第四回は現代にみられる、実践的な語学というものを考察していきます。
ただし、この「特殊」カテゴリーでは、大きな事情があって本当に英語を必要とされる方が、本気で英語学習をしたいという特殊な状況を想定した特別企画となっております。 堅苦しいものとなるかもしれませんが、読み物としても楽しめる内容となるよう努めました。管理人個人の意見を述べたものであり、内容の精確性は保証いたしかねます。 
さあ、再び現代に戻ったよ。
過去の歴史を踏まえて、改めて見つめなおしてみようじゃないか。僕らの21世紀を。
【西園寺】笑顔口開け
【霊歌】照れ笑顔口開け

そして、私たち自身を。
このまま下にスクロールして下さいっ。

「必要は発明の母である」と誰かが言った。

Necessity is the mother of invention.ということわざである。

東洋にも、「窮すれば通ず」という中国最古のことわざがある。「事態が行き詰まって困りきると、かえって思いがけない活路が開けてくる」という意味である。

洋の東西を問わず、人類史における共通概念として、「人間は本当に必要に迫られたときに価値あるものを生み出す」と考えられてきたし、実際に人はそうあり続けてきた。それは人類の進化の歩みそのものだ。魚類に過ぎなかった人間の祖先がヒレを発達させて「手」を発明したことも、肺呼吸を獲得して陸上に移ったことも、すべて、水中での生存競争に敗れ、必要に迫られたからだ。逆に、必要に迫られなかった大型古代魚は進化できなかった。

それでは、ある社会集団が、本当に変革を迫られるときというのは、どのようなときか。

たとえばそれは「戦争」である。

戦争は、もちろん悪であるに違いない。

けれども客観的事実として、多くのものが戦争によって必要に迫られて発明されてきたということは認めざるを得ない。

そして平和とは、その副産物の恩恵を享受する特定の期間であるとも定義できる。客観的な事実として、戦争と平和が代わる代わる訪れることが進化の「てこ」として働いてきた。

民主主義などの思想、貨幣や法律、医療や科学技術。

身近なものでは携帯電話やティッシュペーパー、果てはワンピースや花火などの夏の風物詩に到るまで、私たちの祖先は戦争によって生み出された多くのものによって従来の見方が根本的に革新されてきた。

それは、平和な時代におけるちっぽけなアイディア、すなわち、流行(トレンド)とは根本的に異なる。戦争が生み出す発明は、水や空気のようなものだ。まるでそれが創成期からそこにあったかのように、自らの内面的世界観に組み込んで、深く依存するようになる。

とはいえ、生み出されたものを活用すること自体は悪ではないし、それがこれからの戦争行為を肯定することにはならないという考え方もある。戦争が悪だからといってパソコンを使わないという選択は賢明とは言えないだろう。

いずれにせよ、この場で言いたいことはそのような戦争の功罪という難しい問題ではなく、「人が苦心の末に生み出すものは、より研ぎ澄まされ、洗練される」という事実のことだ。

そしてそれは、「言語」も例外ではない。外国語の習得術もまた、「必要に迫られた人々」の間で、より洗練されてきた。

とくに、戦争の過程で生み出された学習方法は、非常に信頼性が高いものと考えられる。それは現代における駅前留学などとは一線を画すものであるはずだ。

その叡智が結集された場所の1つが、米国にある。

米国国防総省、通称ペンタゴンだ。

軍の統括と国防を司るその機関は、特殊部隊や諜報員専用の語学学校「Defense Language Institute」を備えている。そこでは高度な外国語学習が行われ、その質は「世界最高」とも称される。受講者は、まったく知識0のまっさらな状態から、誰もが国防の現場での語学スペシャリストへと変貌を遂げる。中国語やアラビア語など欧米人にとって馴染みの薄い言語であってもだ。

それも国防総省の役割を考えれば必然であり、もし兵士として紛争地域に派遣されたときに、カタコトの外国語しか話せなかったら、恥をかくだけでは済まされない。下手をすれば戦争に負けて、国家そのものが崩壊してしまう。だからこそ軍人やCIAは本当の意味でペラペラである必要があるのだろう。しかし学習到達度もさることながら、最も驚愕すべきは、そのスピードだろう。世の中、10年英語学習を続けても、いまだ流暢とは程遠いという人が大半である。しかし、ペンタゴンの教育では、約1年という驚異的なスピードでペラペラになるのだ。

「それは教育の質によるものではなく、受講生が元々優秀だったからである」と捉えるのは、とても捻くれた見方だろう。そこの部分がどうも、日本と欧米の考え方の大きな違いなのではないか。日本では「優秀な者が訓練を受ける(=機会を得る)資格を手にする」という考えになる。欧米では「訓練を受けた(=機会を得た)者が優秀になる」という前提に立つ。第二言語の習得と言う点で頭が切れるかどうかはあまり関係が無いのではないか。それはちょうど、日本人なら誰でも日本語がペラペラであることと同じだ。逆に日本人のように平均IQが高くても全体的に英語が話せないという母集団もある。彼らは語学の才能があって軍属になったのではなく、軍属だから外国語を学んだ。そもそも、一カ国語や二か国語ならまだしも、それ以上の言語を短期間で習得していくとなると、才能や努力量の多さだけでは、どうも説明がつかない。学習内容が根本的に優れているものでない限り、これは実現できないだろう。

この特殊な語学学校は、当初は倉庫の一室に過ぎなかった。

陸軍に所属する日系アメリカ人が日本語を習得するための教室だったという。

ところが第二次世界大戦、冷戦、ベトナム戦争と、戦争を重ねる毎に拡張されていった。その教育方法は国家規模で開発・研究され、次第に洗練されていく。いまではCIAが数カ国語を習得するための要衝へと進化を遂げた。

この教育機関には、海外の軍属の語学学校という表の顔と、CIAなどの英才教育機関という裏の顔がある。このうち後者の方は、内容的に前者とは別種とされるが、その内容は機密扱いで一般公開されていない。ただ、国防総省職員の著作を注意深く読んでみると、「24時間体制」で「一定期間内に1万時間の訓練」をおこなうということが仄めかされている。

また、もう一つのヒントとしては、その学習期間が最大で1年1か月~1年4か月とされる。この1年1か月というのは事務手続き上の都合ではなく、恐らく必然のものだろう。というのも1日24時間を続けていくと、ちょうど1年と一か月で1万時間になるからだ。つまり、ペンタゴン式では、1日24時間、恐らくは寝ている間も、その言語環境に絶えず触れているということが予想される(睡眠中の音声は睡眠の質を下げるという報告もある)。

ところで、この「一定期間に1万時間」「24時間体制」「母国語のシャットアウト」という条件に近いものを、私たちはどこかで耳にした覚えがあるはずだ。

そう。空海の行った「求聞持法」である。これは「人里離れた場所で、寝る間を惜しんで、100日以内に百万遍の真言を唱える」というものだった。だが実際には100日以内という縛りは後世の密教が後付けしたもので、実際には100日で効果の得られないこともあったし、100日を掛けずに終わるものもあった。100万遍という回数にしても行として体裁を整えるための方便で、必ずしも回数が決められたわけではなかった。要するに「期間を定めて、その期間内に可能な限り真言(=外国語)を唱える」ということが重要な要素だった(詳しくは、これまでの記事を参照)。

密教では100日間の求聞持法では効果が出ないことがあるとされ、実際には求聞持法は1回目、2回目と何度か繰り返される性質のものだったようだ。そうなれば1万時間にどんどん近づいていくことになる。

これは米国国防総省の教育方法と酷似しており、どうにも奇妙な符号ではないか。古代と現代、日本とアメリカという、時空の隔たりを超越して、「学習方法」と「学習効果」が一致するのである。しかも、いずれの場合も、「大きな必要性」に迫られて見出されたものである。一方は「水害、飢饉、病などからの自他救済」のため、他方は「戦争と国防」のためであり、いずれも深刻度は大きい。

このような場合、そこから生み出されたアプローチは外国語習得法としてかなり信頼性が高いものではないか。

話を変えよう。

ユダヤ人は外国語が上手いとよく言われる。

けれどもそれは、先天的な才能とは凡そ関係が無い。その必要に迫られたのだ。さまざまな理由で迫害と追放に遭う彼らにとっては、効果的な外国語習得術を発明することは不可欠なものだった。もちろん彼らの学習意欲は高かったに違いないが、命に直接関係する死活情報である以上、そこには当然、淘汰作用が働く。どういうことかというと、国外追放された者同士の間で、不効率な学習方法は伝わりにくく、より効果的な学習方法が広まり伝えられる、という力動作用が働く。つまり本人のやる気だけでは説明のつかない「方法論の洗練化」が促される。

そして今、ユダヤ人は必ずしも差別されなくなったので、外国語に長けるユダヤ人も減っていった。「語学の才能」というものは存在せず、それは最初から人種とは関係が無いことなのだから、これは頷ける。

いま、その現象はシリアやメキシコなどの難しい状況にある地域で起こっている。平和な先進国社会でみられるお受験や習い事などの御家芸ではなく、より実際的にそれが求められる状況でこそ、本当の外国語習得術は洗練されていく。

貴方が痩せたいとして、ダイエットの専門家とプロボクサー、二人のうちどちらに話を訊くだろうか。私なら後者を選ぶ。一方は美容目的だが、他方にとっては死活問題だ。平和な時代の幸せな人々の間で広まる「お役立ち情報」というものは、アテにはならない。英文科卒業の英語の専門家に話を訊くよりも、紛争地域の孤児に話を訊いた方が言語のプロになれるのではないかと私は思うのだ。「一切の書かれたもののうち、私は血でかかれたものだけを愛する」とはニーチェの言葉だ。 「血でかかれたもの」が信用に値するというなら、仏教の求聞持法は「血でかかれたもの」であり、CIAが軍事目的で履修する外国語教育は「血でかかれたもの」ということになるのだろう。

管理人は、あるシリアの若者に英語学習方法を問うてみた。

彼はあらゆる国の言語をマスターしていた。彼もまた、空海やCIAと同じやり方を提示してみせた。すなわち、「24時間、可能な限り、海外ドラマ等を通して英語を聴き続けるということを一定期間続ける」ということだ。また同時に、「文法や難しい単語などは全て無視する。ほとんどの単語は重要ではない」と彼は付け加えた。これも密教の阿息観に一致する。

また元グーグル社長の村上憲郎氏によれば、日本語にはない子音の存在について指摘し、英語の高周波を認識する訓練が必要であるとする(実際フォルマントからして日本語と英語はかけ離れているとよく言われる)。彼によれば日本人には最低1000時間の、速い速度で発話された会話のリスニングが必須であるとする(ただし日本の英語学習教材に付属のCDは遅すぎるから厳禁である、と同氏は述べている)。日本の米軍基地でキリスト教教育を行っていた斎藤兼司氏も最低1000時間と述べた。

この1000時間というのは一日10時間(つまり一日中のリスニング)を行った場合の100日間に相当し、それは求聞持法の内容と一致する。しかし、村上氏も斎藤氏も、「最低で1000」と述べているだけであって、1000で十分とは一言も言っていない。最低レベルでも1000時間ということだ。求聞持法の100日間(1000時間相当)にしてもそれは同じで、求聞持法は1回や2回達成するだけでは足りないという記録がある。これらを複数回繰り返して圧倒的な外国語没入環境を実現し、ゲシュタルトを構築する。そのうえで最後に明示的に単語や表現を学んでいくことが、ペンタゴン流のやり方であり、そうすることによって、カタコトではない、実際的な能力になるのかもしれない。

科学者の苫米地英人氏も著書の中で上記と同様のことを述べている(「英語は右脳で学べ」中経出版)。同氏はまた「一日8時間、海外ドラマを1~2年観ると同時に、その間、日本語を遮断すること」を提唱しており、これもペンタゴンや求聞持法と重なる。他にも管理人は多くのペラペラな人を調べてみたが、やはり同じようなことを言っていた。

▲回転摩擦式発火法

以上、時間的都合で少々駆け足で見てきたが、上記の方法論に共通してみられる条件は、「一定期間内の、集中的なリスニング」だろう。これらの方法はどれも際立って「音」と「特定期間内の集中的な訓練」「圧倒的長時間」を重視しているところが特徴だ。

万物の根源であるところの音(波動)の働きを利用する。そのうえで「一定期間内の集中的な」というところに、摩擦熱が生まれるのだろう。それは手で火を起こすような過程なのかもしれない。休み休み行っていたら、火はつかない。

これらのことから、次のように結論できる。

・海外ドラマ等を通して、

・その細かい意味を考えずに、

・日本語字幕無しで、

・とにかく一日中リスニングを続ける

このことは、外国語習得のうえで極めて重要な意味を持つということが、強く示唆される。ただし、一般の社会人が社会生活を送りながらこれらのことを行うのは、困難を極める。一時的に休職するか、あるいは無職の高齢者引きこもりの方でもない限り、実践は事実上不可能だろう。世の中には「一日30分聞き流すだけ」という学習教材も多いが、そうしたものはすべて嘘だ。30分どころか3時間でも足りない。その意味において、方法を知ったところで誰もができるやり方ではない。しかし、頭が良いとか悪いとか、お金があるとかないとか、才能だとか、そうしたことが求められるわけではない。

なお、海外ドラマや海外ニュースを観る手段としては、

動画配信サービス「Netflix」(月額800円で見放題)、
インターネット通信販売「アマゾン」(中古DVDを買う)、
衛星放送「スカパー」(基本料金が毎月400円+1チャンネル千円ほど)、
レンタルビデオショップ「ゲオ・ツタヤ」(地域によって1枚100円から)、
宅配DVDレンタルサービス「ぽすれん」(1枚100円+配送料300円)などがある。

ただしスカパーに関しては、「CNN/US」の1チャンネルを除いてCMコマーシャルが日本語であることが多く、強制的に日本語を聞かされることになる(管理人はこれを『日本語テロ』と呼んでいる)。この訓練においては日本語そのものが(一時的に)脅威となるので、要注意だ。その解決方法としては、CMの時に一時的にリモコンのミュート(消音)ボタンを押すか、スピーカーの電源を切る、といった手段がある(ほかにも高度な方法があるがここでは割愛する)。

Netflixはかなり経済的にお得で、海外ドラマだけではなく映画も見放題だ。しかし、その唯一の弱点は、便利すぎるということだ。面白い映画までたくさん見放題なので、つい映画を見てしまう。しかし映画は、アクションシーンなどが多くて、英語学習には向かない。しかし、映画のほうがドラマより面白いので、つい映画のほうを観てしまう。これでは学習にならない(というわけではないが、効率が少し悪い)。そのうえ、面白すぎてストーリーの詳細が気になり、つい日本語字幕をつけてしまう。こうなるともう完全にアウトだ。英語の音に集中できないからだ。やはり効率的には早口の海外ニュースや海外ドラマが一番良いのだろう。

ゲオやツタヤは一部地域で1枚100円でレンタルできるが、都内だと300円以上することがある。しかし「ぽすれん」では、日本中どこにいても、旧作1枚100円だ。

しかし管理人のおすすめとしてはアマゾンで中古DVDを買ってしまったほうが良いと思う。なぜなら返却する必要がないし、スカパーにあるような「日本語テロ」もないからだ。予算としては1000円以下に抑えたほうがよい。管理人は「BONES骨は語る」という海外ドラマをBOXセットで中古価格200円で買った。この中に1シーズンがすべて含まれているので、これを全部レンタルしようとすれば648円かかる(しかも返却しないといけない)。よってこのような場合、アマゾンで中古で買ってしまったほうが安い。

こう言うと、「値段の安いものは、概してつまらないものが多い」と反論されるかもしれない。しかし、つまらないDVDは、ストーリーの内容を知りたいと思わないだろう。だからこそ、学習として割り切れるという側面がある。もしこれが面白いDVDだと、そのストーリーの詳細が気になり、つい日本語音声や日本語字幕で観てしまう。そうなれば訓練とはならない。
まずは最も安価で簡単な手段であるゲオ・ツタヤで海外ドラマのDVDをレンタルされることをお薦めする。そして3日間それを試してみて、続けられそうであれば、引き続き挑戦してみてはどうだろう。

もし貴方が、やむにやまれぬ深刻な事情で、どうしても英語を習得したいと考えるなら、世の中にはこうした方法論もあるのだということを、覚えておいてはいかがだろうか。そして、ぜひ困難から自己を救済し、より良い世の中の役に立ってくれたなら、管理人として、これに勝る喜びはない。

「歴史探訪ミステリー」は、このあたりで筆を置く。

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