語源マニアにならない

語源とは何か

まず初めにお断りいたします。今回の記事は、正直、私としましては投稿したくありませんでした。話が少々、込み入ってくるからです。語学をするために、私がこれから述べることを頭で理解する必要は全くありません。時間が惜しい方は、最後の結論だけお読みいただくことをお勧めいたします。

さて、英語と日本語は確かに全く別の言語ですが、人間が使う言葉である以上、本質的な部分が変わるわけではありません。もし言語同士が本質的に異なるものであるなら、何カ国語も話せる人が沢山いることの説明がつきません。彼らは、それぞれの言語を別々の方法で習得するのではなく、正しい方法で1つ習得したら、それと同じやり方をほかの言語にも適用して、その結果、何カ国語もマスターしているのです。そして、習得の過程が同じであるなら、言葉とは普遍的なものであると考えるのが自然です。

そこで、英語の語源について考えるには、まず日本語の語源から考えた方がよさそうです。

私達のもっとも身近にある日本語、「ありがとう」の語源を考えてみましょう。
ありがとうは、有難う、つまり、「有り難いこと、得難いこと、ありえないほど恵まれていること」という語源があります(多分)。
だから「ありがとう」という言葉が、奇跡的な出来事に対する感謝の気持ちを表すようになったのでしょう。

【霊歌】笑顔口開け
へぇ~。そぉ~なんだぁ~。おもしろぉ~い。
【霊歌】後ろめたさ
・・・・でも、だから何なの?
いえ、だからどうということはありません。
ただの言葉遊びでございます。
【マルキオン 悲哀】
 
語源とは錯覚に過ぎない

「ありがとう」は、「ありがとう」です。 それ以上でも、以下でもありません。 語源によって状況が生まれるのではなく、「状況」の結果が語源であるのです。そして「状況」は、時代、文化、人、時と場合、言外の意図によって変わりますから、ある時代のある状況から生まれたに過ぎない語源の成り立ちなど、もはや言語史でしかなく、そこからの推理と演繹によって言語を解釈しようとするなら、それはもう言葉として死んだも同然です。語源による単語の解釈というのは、「後知恵バイアス」という認知バイアス(=錯覚)の一種であり、考古学者のように、結果論から恣意的に自分の国の言語に無理やり当てはめて説明づけているだけです。

語源の知識がいらない理由

たとえばContradictという単語を考えてみましょう。
con(共に)track(引っぱり合う形で)dict(言い合う)という3つの語源に分解できるので、矛盾するという意味になります。
しかし、contradictのような簡単な語は語源を意識せずにパターンとして刷り込んでしまった方がよいです。
つまりこの場合は単純暗記の方が効果的ということです。
新しい単語を学ぶ場合、イメージの掴みにくい単語のみに語源の知識を適用すべきであり、
通常の場合は語源を意識せずに、機械的に暗記する方がいいのです。

それに、多くの場合、最低限の語源の知識は「原義」という形で和英辞書で解説されています。

  和英辞書はジーニアス英和辞書を使うようにしましょう。他の辞書よりも比べ物にならないくらい、「原義」が解説されており、単語のイメージがつかみやすいです。

それでは、applyという単語を考えてみましょう。
「a」は「~に対して」、「ply」は「折りたたむ」という意味がありますから、applyには「~を何かで包む」というコアイメージがあるということが読み取れます。
だからapplyは薬や包帯で相手を包み込むとか、ペンキを塗るとか、何かを適用させるという意味が派生した。

Consoleの語源を見てみましょう。
consoleは「ともに独りである」という語源があって、お互いに単独では独立した完全な状態(entity, integral)では存在しないということを意味している。
何かと何かが合わさることによってはじめて完全な状態になるという意味が内包されている。
その結果、誰かを慰めるとか、コンピューターコンソールとか、半円型のコンソールキャビネットとか、そういう意味が理屈的な必然性のなかで導かれる。
「へぇ~」と、妙に納得できた。

しかし、これらの知識は言語史、はっきり言ってしまえば雑学でしかない。
それは偏執的(マニアック)な暗号解読であって、語学じゃない。
「へぇ~、そぉ~なんだぁ~、すごぉ~い」なんて体験は求めていない。
Consoleがどういう意味かなんて、本来、状況の中から無意識で理解していくものだ。 
私はエックスファイルという海外ドラマを観て、computer consoleの意味を知ったし、単語帳から、慰めるという意味も知ることができた。
その語源も自分で大体わかっていた。

無意識でconとsoleに分解してその意味を類推するというようなことは、少し勉強に慣れてきた学習者ならば自然と行う。それを「英語学」という分野の「1つの知識」として長期記憶にするうえでは、
「あ~、だから慰めるという意味になるんだ」という理解や演繹の過程は役に立つ。

しかしだからといって、consoleの語感を得られるわけではない。まず、「長期記憶」という言葉がでてきた時点で、何かが根底からズレている。学校のテストや受験ではないのだから、「知識として長期記憶化」することに意味はない。何か特定の知識を1つ1つ暗記するよりも、無尽蔵の抽象言語空間に自在にアクセスできる力こそが語学の本質であることは、もはや明らかです。

外国語を理屈で理解したり、個別に切り分けた知識として暗記しようとするのはナンセンスであり、その時点でそれはもう語学ではないということです。

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語源を遡ったり、語呂合わせで覚えてみたりして、理屈で「納得」することによって覚えようとしてしまう。こういうやり方は日本の受験勉強をテクニックで乗り切った「受験脳」の方に非常に多く見られる、典型的な誤りであり、そうした方は(日本語は上手ですが)、たとえ何年も勉強(研究)して、留学したり英語講師をしている場合であっても、英語のニュースは勿論、子供や学生が観ているような英語のアニメやyoutube動画さえ、あまり理解できていません。そのくせ、語源や文法にはやたら詳しいという状態。

彼らは、グーグル翻訳が苦手とするような、生き生きとした表現に出くわすと、「ん~」と頭をひねってしばらく考えた後、「あ、これはこういう意味では?」とトンチンカンな解釈をするのがやっとです。このことには私自身、驚きました。


語学にはイメージが大切であるとよく言われます。しかし、そのイメージというのは、理屈によって導かれるものではありません。日本人が、左脳領域で、日本語脳を使ってどれだけ推論・演繹してみたところで、そこから得られるのはどこまでも「ある本に対する個人的印象を主観的かつ逐次的に説明づけたもの、読書感想文」であり、英語の本質(=読んだ本)そのものではない、つまりただ日本語が上手くなっていくだけです。それではグーグル翻訳レベルで、ぎこちない解釈しかできないままです。それでも留学したり英検1級を取得することはできますが、所詮はごまかし程度の語学力であり、そもそも語学として不効率極まりありません。

語学は、左脳というより右脳。理屈というより反射神経。その過程のなかで得られる、ある種の感受性。ある種の化学的状態

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このように言うと、皆さまは混乱されるかもしれません。すごく難しいことのように感じるかもしれません。しかし、実はとても単純な話をしているだけです。

もう少し、分かりやすくご説明しましょう。

感謝という日本語の意味を貴方は知っていますか? 感謝という言葉は、漢字のを逐語的に読み取ると、「謝る気持ちを感じている」つまり「申し訳ないと感じている状態」ですよね。だから、「本当に申し訳ないね、いろいろありがとうね」という意味になるのだと、理屈として納得することは可能ですね。しかし、貴方はそのようにして、この言葉を覚えたのでしょうか?日本語を学ぼうとしている外国人に、そうやって日本語を教えますか? 習得という言葉の語源は? 漢字を逐語的に観て、「習」と「得」に分解し、それぞれの語源を遡って「習い知識を得ること」と理屈で納得することで覚えましたか? さらには、「習」や「得」という漢字の成り立ちが重要だと思いますか? このことを、ご自分でよく考えてみて下さい。 「何」という漢字をご覧ください。「にんべん」と、「可」という語源に分解して、それぞれの意味を調べていきましたか?

「何」という言葉を辞書でひくと、次の逐語訳がでてきます。

①「なに、なん、なんの(疑問・反語の助字→どの、どのような、
  どうして~か)」

②「いずれの(疑問・反語の助字→どの。どの~か)」

③「いずく、いずくにか(疑問・反語の助字→どこに~か)」

④「なんぞ(疑問・反語の助字→どうして~か)」

⑤「責める」、「なじる」

⑥「なんとなれば(なぜならば)」

貴方は、これらを逐語的に分類・理解して「何」という言葉の使い方を覚えたのでしょうか? 「何」の言語的成り立ちを遡って、そのイメージを仮説立てて演繹し、これらの分類的解釈に結び付けるという抽象的思考作業をしましたか? 貴方は、頭で「ん~、ん~、あ~でもない、こ~でもない、」と考えて納得することで、「何」という日本語を習得しましたか?

違いますね?

そんな風に日本語を学んでいる外国人がいたら、本当に可哀想。生真面目というレベルではありません。そんなのはノイローゼです。

こんな風にして外国人が日本語を勉強しようとすることはズレていると、貴方は思うことでしょう。しかし、これとまったく同じようなやり方で、私たちはしばしば英語と向き合ってしまうのです。

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語源の深い知識は、バラエティ番組の「へぇ~」になるだけだ。
英語業界や文科系大学教授の飯のタネになるだけだ。
われわれ学習者は、経済的にも時間的にも、雑学などに振り回されるべきではない。

語源の知識が(気休め程度に)役立つ場合

語源の知識が役立つときというのは次のような場合に限られます。

1、スペルが似ている単語が複数ある場合

conformやconfirmの意味を見分ける際にconとformに分解して考えてみますと、con(ともに)form(形作る)→「規則に従う」

con(完全に)firm(固める)→「習慣にする、信念を強める、etc」

といった意味が導かれることを、理解できるようになります。

これによって、スペルが似ている単語を見分けやすくなります。

ただし、このために、語源の知識を学ぶ必要はありません。というのも、上記のケースは、精確には語源ではないからです。firmの成り立ちとは、formの成り立ちとは、と考える場合には語源ですが、この場合は単に1つの単語を切り分けているわけですね。そしてfirmやformの意味など、単純暗記で十分です。conの部分は語源ですが、既に述べたように、conなどの最低限の語源はジーニアス英和辞書を長く使っていれば自ずと身についてくる知識です。よって、1のケースでもやはり語源の知識は不要であるという言うことができます。

2、意味が似ている単語が複数ある場合

immigrate とemigrateの違いを考える場合などだ。

接頭辞 ex-, ef-, e– は「外へ」を意味し、in-, i-が「内側へ」を意味するということを知っていれば、immigrateが「外国人がこっち側に移住してくる(入ってくる)」、emigrateが「自分が外国の方へ移住する(出ていく)」という意味であることがわかる。

さらに紛らわしい単語のmigrate(集合的に「移住する」)の語源までは考えようとは思わない。ただ、mはmedia(中間)を意味しているのかもしれない。そうであるとすればimmigrate, emigrateがそれぞれ入ってくることと出ていくことを意味するのに対し、migrateは2地点間の移動に主眼が置かれていることになる。したがってメキシコからアメリカへ移民すると言うとき、メキシコからすればemigrateだしアメリカからすればimmigrateされる側、第三者である日本からすれば客観的な立場でmigrationという現象として捉えることができる。

しかし、「移住」と「移民」の違いを偏執的に見分けることが重要なこととは思えない。そういった語感というのは、その無尽蔵な抽象言語空間の中に自らを没入させることによって自ずと得られる、ある種の景色のことだ。1つの観測点から見える景色を別の場所から言葉で描写しても、それはどこまでも「逐語的な感想」であり、「主観的」であり、つねに「的外れ」「比喩」である。「光景」と「景観」と「景色」という3つの紛らわしい日本語を、それぞれの語源を遡ることによって論理的に識別し、それによって日本語を学んでいくということが、いかに愚かなことであるのか、貴方は既にお気づきのことだろう。

結論

ここまで読んできて、「難しい話は分からない」と思った方、

御心配には及びません。「分かる必要はない」です。

むしろ私が言いたいことは、「難しいことを考えてはいけない」ということです。頭は空っぽの方がよいです。

語学に限らず、世の中の物事はほぼすべて、マニアックな知識や、複雑な思考など要らないのではないでしょうか。飛行機を飛ばすのに、その原理を知る必要はありません。そして事実、人類は、飛行機が何故飛ぶのか、まだよく分かっていないというのが現状です。理解したから飛ぶのではなく、飛んでいるという結果を理解しているに過ぎないのですが、両者は同じことではありません。循環論法になるのでこのあたりで区切ります。

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